きょうの料理 昭和57年12月号

実家で一晩眠りこけて、食事の手伝いなどを。
暇な時間に本棚をのぞいたら、これまで気にも留めていなかった料理の本がたくさん眠っておりましたよ。当たり前と言っちゃあ何ですが、すべて昭和の本です。雑誌はともかく、本の場合は写真は画質の粗い白黒なので、基本的に文章からひたすら想像して作らねばならないのよね。なるほどねぇ、バカにするわけではなくて、そういう時代だったんですねぇ、我々の親の世代は。
読み手の想像力もさることながら、書き手も絶妙な表現を求められたことでしょうなぁ。今時は本も写真もそれなりに綺麗に写真もカラーで乗せられるし、食文化も豊かになっちゃってるので、「写真のような状態になるまで混ぜ・・・」みたいな文章が当たり前で誰でも書けちゃうし読めちゃう理解できちゃうというのがいいことだか悪いことだか、などと考えてしまいます。ある意味、私なんかはそういう現代の恩恵を預かってるから、一人でいろいろできちゃうんでしょうな。別に自慢じゃなくて、こんな白黒の粗い写真で「メレンゲを八分だて」なんて書かれても、わかりようがないじゃない。だから、一昔前は親から子へ料理を教えるというのが必然だったんじゃないかなんて考えるわけですよ、実演を見ないとどうしようもないから。そういうのが薄れたのが現代なのかなぁ、と。
さて、予定通り大幅に話がそれましたが、本棚から表題の冊子を発見。12月ということで正月料理特集。別段、書かれていることが現代にないような珍しいことかというと、それほど変わるわけもないおせち料理のレシピなのですが、おいおい昭和57年12月ってことは昭和58年の正月、Mickがもうすぐ7歳という時のおせち料理じゃないか、と感慨に耽ってしまったわけですよ。
レシピというのは、伝統をかたくなに守るような料理なんかだったら黄金比のように崩しちゃいけない製法があるものだけれど、家庭料理の味というのは時代とともに移りゆくもの。移り逝くと書いてもいいかもしれない。いわば地図のようなもので、その時代の日本人の味の好みを写しているものじゃないかと思ったのです。家の味はもちろん雑誌のレシピとは違うし、自分の好みもまた違うものになっているだろうけれど、昭和58年の正月の日本人の味覚ってのが、この冊子に記録されてるんじゃないかなと思って、何だか貴重な気がしたのです。もし、親がこのレシピに忠実につくっていたらとしたら、これが自分の初期のおせち料理味覚を形成した素材と言えるわけで、それを再現できると想像するだけで少しわくわくしましたよ。
ちなみに、さっき「地図のようなもの」って書いたけど、昔の地図って時々高く売れるらしいですよ。もちろんちゃんとした文献として国土地理院かどこかで、時代ごとに地図の記録って残されているものですけど、一般的に入手可能なものとしては、確かに古い地図なんて見つけにくい。今時のデジタルな情報みたいに、何でもかんでもUpdateしちゃうのがよろし、というのはちょっと違うんじゃないかと、温故知新なことを考えてしまいました。