アライアンス

東急田園都市線は昔から半蔵門線と相互乗り入れしているが、その時は車両のデザインの違いが気になった。どちらかと言えば、半蔵門線営団地下鉄)の車両の方が先鋭的に見えたので好きだった。15年以上前の印象だが。
今日乗った車両は、東急でも東京メトロでもなく、東武鉄道の車両だった。別に乗り心地やつり革の位置くらいは気にしたりはしないのだが、どうしても違和感を強く感じたのが広告。一言で言ってしまうと、東急と比べて安っぽい。「ウォークラリー」「キノコ狩り」「債務相談」、いずれもローカル色たっぷり。新築マンションなど不動産や、鬼怒川・日光の案内もあるが、いかんせん、デザインの質が低い。
買収、合併、業務提携、共同開発、企業同士のアライアンスは様々な形態があるが、どんなレベルにしてもFeasibility Studyというべき事前調査があり、その中でも企業価値に大きく影響するという点で、ブランドは重要な位置を占めている。アライアンスによって収益に好影響があっても、自社側のブランドイメージ=価値が下がってしまっては、元も子もないはずだ。今回の乗車で感じたのは、ブランドイメージの維持向上という視点における、Governanceの弱さだった。
上記したブランド統治は、競争という環境がないと喚起されないのかもしれない。たとえば、神戸ー大阪間におけるJR、阪急、阪神のような激しい競合環境で、利用料金が拮抗した場合、ブランドイメージは収益に大きく影響するファクターとなるため、手を打つ価値があると判断されるだろう。
ただ、鉄道会社の事業が特殊なのは、鉄道事業以外に百貨店や不動産事業、ホテル事業など、ブランドイメージが大きく影響する事業を同時に抱えている点だ。完全に同一ブランド名でやっているとは限らないが、ブランドは名前だけではないコーポレートイメージといえるため、本体のイメージが悪くて、下部組織だけが良いイメージを持たれるというブランドはないといえる。したがって、本業その他すべての事業を含めて、ブランドをマネージしていくことが肝心だ。
"東急田園都市線"として走るからには、"東武鉄道の車両"に対しても、同レベルの広告宣伝を行わせないと、東急ブランドそのものが陳腐化してしまう。鉄道ユーザーは、特に通勤通学では、ほぼ選択肢のない状態で電車に乗らざるを得ないため気にしないが、東急に対するイメージが低下すれば、東急百貨店を利用しなくなる可能性も出るし、その他スーパー、旅行代理店、ホテルに対しても『安っぽい』イメージを持つことも考えられる。
他所様の批評をできるほどまともな会社にいるわけではないが、どうも気になってしまった。