ライブレポート:Jeff Beck at The Brighton Centre, 16 Oct 2010

2010年10月16日、英国南部ブライトンでのジェフベック先生のライブに行ってきました。ロンドンから列車であれば1時間、今回はバスで2時間かけての遠征。行きの3.5ポンドという破格の運賃に釣られましたw


ブライトンは海に面したビーチの街で、国内的には観光地なわけですが、いかんせん気温10度を切ろうかという季節なので夏ほどは混み合っていませんでした。名物は1899年に建造されたという木製の桟橋。先っちょには遊園地もありますが、桟橋上のお店・アミューズメントは見事にB級で、時間が止まっているというか、昭和の香りが(イギリスだけど)。。。


さて、街の様子に紙面は割いていられないので、手早くライブのレポートを。
ライブが行われたThe Brighton Centreは海沿いに1km以上に渡って続くリゾートホテルと並んでたっており、アクセスも便利。ただ、周りの建物と比べると無機質なコンクリートの壁で色気無く、少し薄暗い感じ。それでも、表には"JEFF BECK TONIGHT"と書かれ、若干のやる気を見せる。


通りに面した最初のドアでチケットのチェックがあっただけで、手荷物検査などセキュリティチェックなどはまったく無し。入って正面奥が特設グッズ売り場でしたが、見事にガラガラ!これはロンドンでもよくある光景で、イギリス人は限定品とか記念品といっても興味を示さないというか、ケチというか(笑)、人だかりに並んで焦って買うということがないように思います。


イギリス人達は館内のいたるところでビールを飲んだくれていて、ほとんどパブのよう(これもよくある風景)。その辺はスルーして、さっさとホールに進むと、衝撃的な光景が(笑)!

えぇっ?
前座があるとはいえ、5分前でこの空き具合!そして、フロアの座席の手作り感!少し豪華なパイプ椅子といったレベルの座席が、ホールの左右のスペースを大きく残して設置されているのです。日本の地方都市の成人式よりも規模が小さいかも。。。我らがジェフベック先生のライブがこのショボショボな会場で行われるというのは、東京やロンドンでは味わえないという点で貴重な体験でした。



19時半。まずはサポートアクト、Trombone Shortyが登場。サポートに入るというニュースは見ていたものの、実際に見聞きするのは今回が初めて。トランペットやサックスより地味に思っていたトロンボーンがメインというのは個人的に体験無く興味があったのですが、これがびっくり!脅威のパフォーマンス!そして、ボーカルもトランペットもうまいw 圧巻はトランペットで1分近く音を切らさずに吹き続けるソロ。吃驚人間コンテストですか?!というくらいの凄さ。鼻で息を吸いながら、口から息を出し続けている???もう、わけわかめ!!!
24歳。こんな凄い人が世の中に出ていたのか。。。雑誌とか読まなくなったというのもあるけれど、あらためて最近の自分のアンテナの低さにがっかり。。


セット入れ替え中のBGMはチャックベリーの"Rock and Roll Music"や"Brown Eyed Handsome Man"、James Brownの"Sex Machine"など。このあたりは、冬から変化が無かったのかな。
そして、20時半を回った頃、照明がゆっくりと落ちて真打ち登場!

座席は昨年12月のチケット販売と同時にブライトン遠征を決めて即行で購入したので、最前列を確保できていました。うはうはで楽しみにしていたら、思ったよりも舞台が高く(1.5mくらい)、モニタースピーカーでナラダさんが見えないという不運あり。

それでは、曲ごとの感想を。音源と併せて読んでいただければ、此れ幸い。


1. Plan B
シーケンサーとキーボードのバックが流れ始めると同時にジェフが歩いて登場。ステージ中央、ドラムの前に置かれたストラトをおもむろに手にとって弾き始めるというオープニング。ライブで演奏されると思ってもいなかった曲が、実はナラダ&ロンダのリズム隊がめちゃくちゃハマるという不思議な発見!過去のEternity Breatheのように曲自体は短めにアレンジされているものの、リズム隊も全力、ジェフもワウペダルまで使って、一気に高いテンションまで登り詰めていきました。


2. Stratus
ここ数年のライブで、「2曲目ながら実質オープニング」みたいなポジションを築いているBilly Cobhamの名曲。いつもどおり、後半はナラダさんがド迫力のドラムソロ。前の方の座席だと、ほんと胸を突き抜けるような衝撃波なのが快感!それにしても、ドラムソロの時のギターのリフで微妙にタイミングをずらす時があるのは、ジェフ先生の嫌がらせでしょうかw


3. Led Boots
リフの間のブレークに合いの手の掛け声を入れる、なんていうのは、恐らく日本でのライブが発祥じゃないかと思いますが、どうでしょう?ジェフが耳に手を当てて、「聴こえませんが?」と煽るものの、明らかに慣れていないイギリス人はあまりついていきませんw ジェフ先生も手を大きく挙げてアピールしますが、最後は「ダメだ、こりゃ!」の苦笑いであきらめてました!


4. Corpus Christi Carol
09年9月O2 Indigoでのライブ以来、アルバムにも収められ、定番になっている美しいバラード。演奏も、すごく安定してきましたね。


5. Hammerhead
アルバムEmotion & Commotionの曲順通りに続くHammerheadは2月のO2 Arenaでのライブ初登場の時と比べると、テンポが抑えられた上、より重心の低いアレンジになったように思います。リフを一音一音はっきりと刻んでドラムともリンクさせる感じなので、勢いで誤摩化せない難しさがあるものの、全員での微妙なタメのつくりが緊張感のあるグルーブを生み出していますね。
写真はイントロでワウペダルを踏みながら弾き始めるジェフ先生。シャッター速度が遅くなるためブレてはいますが、照明がよい感じでフレームに収まりました。



6. Mna Na H'Eireann
未だに読み方がわからない(!)Sharon Corrのアルバムでの共演曲。アイリッシュのメロディの独特の泣きは、ジェフのギターにぴったりですね。ロンダ姉さんはエレキのアップライトベースに持ち替えての演奏。もう少しはっきりしたソロパートを与えても面白いと思うけど、この後にまるまる一曲ソロがあるのでいいのかな。


7. Bass Solo
このベースソロも2月のライブ以来、定番メニュー。ジェイソンがさりげなくバックを埋めたりするあたりは、少し進化を見せていますが、それ以上にベースソロ自体が遥かにテクニカルになりましたね!2月の時は最初のハーモニックスのパートの後はすぐにパワーで押して圧倒するような展開でしたが、もっと反応を楽しみながら弾いている感じでもありました。というのは、このソロの間、やたらとロンダ姉さんと目が合ったから(笑)。目で「なんか反応しなさいよ」と言われたような気がしたので、わかるように笑顔で大きく頷いて見せたら、「よろしい!」と向こうも頷いていました。なお、録音で演奏中に左チャネルから時折聴こえる女性のシャウトは、ロンダ姉さんです。Led Boots同様、オーディエンスがいまいち食いついてこないので、自らシャウトしていたわけです。親指立てて見せたら、少し笑顔になってくれました。ジェフも、"Rhonda Smith! Ladies and Geeeentlemen!"と少し小馬鹿にするような(?)発音でしたねw(別に顔は怒っていないですけど)


8. People Get Ready
2月のときはワンコーラス程度で終わって残念だったアレンジも、今はフル演奏になりましたね。自信はないですが、2月や日本ツアーではフェンダーチャンプを通してイントロを弾いていたような気がしましたが、今回はマーシャルのみの使用だったので、やはり音の枯れ具合が違って聴こえました。後半のアレンジが過去になかったパターンで、ジェイソンがゴスペル調のピアノソロにチャレンジしています。ぶっつけ本番だったのか珍しく少し音をはずすところもありますが、これまでオルガンの音色でのソロで哀愁を出していたのが、ピアノでしっかりタメて響かせることでソウルフルで情緒的になった印象です。裏のロンダのサポートがさりげなくも絶妙で大好きです。


9. Rollin' & Tumblin'
もう書くまでもないですが、ロンダ姉さんがはりきってシャウトしても、オーディエンスはそれほど盛り上がってついては来ませんw それでもバンドのテンションが落ちることは決して無く、ハーモニックスを決めまくって入ってくるジェフのギターソロには、当日鳥肌が立ちました。エンディングもカッコいいです!


10. Big Block
この曲の前半では、いつもジェイソンが楽しそうに見つめているだけなのを見て、あらためてトリオでの演奏での分厚い音に圧倒されます。強弱をつけたアレンジも呼吸ぴったりで、緊張感がどんどんと上がっていく後半は、今回も好調!ナラダさんもド迫力!


11. Somewhere Over The Rainbow
一時期はWhere were youの代役的だったものの、今や見事にバンドアレンジも加わり、魅せる演奏になりましたね。クリアトーンでのハーモニックス音が美しくて大好きなのですが、こういう曲のときは今回のような静かなオーディエンスは最高ですw


12. Blast From The East
この曲はこのバンドになって更に躍進を遂げた曲ではないかと思っています。軽快に前のめりにならず、逆にテンポを抑えて重心を低くすることが、変拍子の癖を意外にうまく引き出しているようで興味深いです。


13. Angel
この曲も今や安定感抜群ですね。ロンダも、タルちゃんとは異なる遊びを入れるようになりましたね。今回面白かったのは、最後のボトルネックを右手に持ち替えての見せ場のギターソロの裏にジェイソンがピロピロピロ〜♪と効果音を入れ、ジェフが思わず吹き出してしまった瞬間(笑)。演奏が乱れることはなかったですが、左チャネルでうめき声のように聴こえるのが、ジェフ先生の肉声です。


14. Dirty Mind
この曲を生で聴くのは初めて。ジェイソンはパーカッションの音色をキーボードで器用に弾きこなし、ナラダさんと掛け合いも楽しんでいました。それにしても、ここでもドラムソロの迫力と言ったら凄かった!ソロの締めくくりからギターリフに戻す時の、「ぅぁぁあ、、、ワン!ツー!」というのは、ナラダさんの肉声。この曲も基本的にはトリオ+パーカッションという構成ながら、非常に分厚い音なのが印象的。かと言って、音をかき鳴らすわけでもなく、むしろ少なめの音でグルーブが生み出されているというのが凄い。このバンドの実力を示している瞬間でもあると思います。


15. Brush With The Blues
Goodbye Pork Pie Hatが聴けなくなって少し淋しい気もしますが、ジェフ先生がとにかくフリーに弾きまくるこの曲も定番で、安定感ありますね。相変わらずの素晴らしい演奏。


16. A Day in The Life
タルちゃん風のフレーズを生かしながらも、いくつかの音色を使い分けて個性を見せるロンダ、一つ一つのスネアを大切に叩いているナラダ、目立たずもしっかり空間を埋めるジェイソン、弦へのタッチのニュアンスを様々に変えるジェフ。安心して楽しめるも、イントロの時点で「もう最後か。。。」と我に返って気づいてしまうのも、定番か。。最後にギターを持ち上げながら残響音をアームで遊んだ後の"Thank you!"はジェフの肉声。




(Encore)
17. I Want To Take You Higher w/Trombone Shorty
ほんの一瞬ステージから掃けた後にすぐに戻り、トロンボーンショーティ(とサックスの若い人)を連れて、このファンキーなナンバー!イギリスのライブで不思議なのが、最初からずっと着席で聴いているオーディエンスもアンコールになったら立ち上がり、一部はぞろぞろとステージ下まで集まってくるところ。当然、アンコールまではセキュリティが止めますが、アンコール以降は暗黙の了解なのか、こんな状態になります。というわけで、ここからレコーダーの前に人だかりができるので、少しだけ音が籠ります。。


ソロ回しの先頭では、ジェイソンがようやくMoogを使い、持ち込んでいる5台のキーボードを使いこなしたのをさりげなく確認。トロンボーンショーティもしっかりとソロを決めて、ジェフ先生も大喜びで、”Trombone 'F*cking' Shorty!!”とあらためて紹介。しかし、ここまで盛り上がっても、オーディエンスはあまり声を出して唄ったりはしませんw


18. How High The Moon
逆カラオケのレスポールソングもこのツアーで定着ですね。オーディエンスが何か話しかけ、一瞬、I Ain't Superstitiousのリフを弾いたり、ご愛嬌も。ジェイソンもテレキャスターで参加。


19. Nessun Dorma
曲を始める前のブーイングは、"Can I go home?"とジェフがふざけて帰ろうとしたため。もちろん、ご愛嬌。しっかりとした演奏で、静かだったオーディエンスも最後だけは大喝采。このあたりの読めない反応でも、やはり同じイギリス人のジェフにはわかるのか、最後は照れながらも笑顔で感謝の言葉を。アメリカや日本のアーティストだったら、何だかわからずにうろたえるんじゃないかという微妙な空気の感覚は独特でした。



それにしても、すこぶるご機嫌で調子の良いジェフベック先生。次回は、ロンドンに凱旋して、26日、27日のRoyal Albert Hallでのライブ。RAHのサイトでは、Imelda May, Olivia Safe (26th only), Sharon Corr and the British Philharmonic Orchestra、と、既に出演ゲストが列記されており、私にはサプライズがなくなってしまいましたが、ロンドンのライブはやはり本人にとっても特別なのでしょうね。逆にロンドンでは見られない、バンドだけでの通常の演奏を楽しむには、こうして遠征しなければならないわけで、自分にとっては地方公演が逆に特別だったり。



[Support]
Trombone Shorty (Troy Andrews)


[Set List]
1. Plan B
2. Stratus
3. Led Boots
4. Corpus Christi Carol
5. Hammerhead
6. Mna Na H'Eireann
7. Bass Solo
8. People Get Ready
9. Rollin' & Tumblin'
10. Big Block
11. Somewhere Over The Rainbow
12. Blast From The East
13. Angel
14. Dirty Mind
15. Brush With The Blues
16. A Day in The Life
(Encore)
17. I Want To Take You Higher w/Trombone Shorty
18. How High The Moon
19. Nessun Dorma


[Download]
https://files.me.com/mickmori/3asiga.mp3
iTunesイコライジングしています。音の好みはそれぞれあると思いますが、感想を聴かせていただけると嬉しいです。